マルチベシキュラボディー:後期エンドサイトーシス経路の選別装置

多胞エンドソーム エンドソーム多胞体 エンドサイトーシス
LEX2変異株に見られる巨大なMVBの電子顕微鏡像
Bar=1μm
(長浜バイオ大学 山本章嗣 先生撮影)
後期エンドソームは、受容体などのタンパク質の細胞での再利用(リサイ クリング)経路への輸送と、細胞内の消化器官であるリソソームへの輸送間の最終選別ポイントです。私たちのグループは、後期エンドソーム経路 に異常のあるCHO変異株細胞(LEX変異株)を樹立しました(Ohashi et al, 1999, 2000)。後期エンドサイトーシス経路は、これらの変異株の変異によって区別できる複数の段階に分けられます。それらの段階には、分子選別装置として機能しているマルチベシキュラボディー(MVB)の段階と、 分子選別過程が完了して、細胞内の消化器官であるリソソームと直接相互作用する、さらに後期のエンドソームの段階があります。
分子選別装置として機能しているMVBは、小胞の内部にさらに複数の小胞を持つ特徴的な膜構造です。私たちの樹立した変異株の一つ、 LEX2細胞では、MVBの選別輸送に異常があって、MVBからのトランス ゴルジネットワークへの再利用経路と、リソソームへの分解経路の2方向の輸送が傷害されています(図 coming soon!)。この細胞を使って、後期エンドソーム での選別輸送のメカニズムと、その生理的意味の解明が進んでいます。た とえば、レトロウイルスベクターを用いた発現クローニングなどの細胞工学的手法を使って、LEX2において、TGNへの輸送異常は、細胞内の遊離 コレステロールが減少している事が原因である事を明らかにし、コレステ ロールの生合成と後期エンドソームの選別メカニズムが密接に関係していることを突き止めました (Miwako et al. 2001)