細胞内には、細胞の骨もあります。細胞が膜でできていて、あとは水っぽいスープ状の物を包んでいるだけとすると、細胞はふわふわと丸い物になるでしょう。しかし実際は、神経細胞のように、細胞本体部分の10万倍もの長さのある長い突起を持った、球体とはかけ離れた様々な形の細胞があります。これは、細胞の内部に細胞の骨があるから可能なのです。細胞骨格と呼ばれる細胞の骨は蛋白質を部品としてできています。細胞骨格の部品は、組み合わさってゼリー状のゲルになり、細胞膜の屋台骨となって細胞のいろいろな形を支えています。この骨格部品は組み合わせを巧みに変えてゲルを変形し、ダイナミックに細胞の形を変化させることができます。 細胞骨格は、また、細胞内に張り巡らされて、細胞内の物質輸送のレールとしても働きます。荷物を詰めた袋が、このレールの上をモーター蛋白質分子の働きで動き回って輸送されています。最近の技術の進展で、生きた細胞内で荷物が仕分けされて運ばれていく様子を、リアルタイムで見ることが可能になってきました。一つの細胞の中は、いろいろな役割を持つ工場が物流システムで結ばれた、一つの街のようにも見えてきますね。
2013年ノーベル生理学・医学賞は細胞内メンブレントラフィック(膜輸送、小胞輸送)研究に